ゲームストップ株事件とは?個人投資家VSヘッジファンド

ゲームストップ株事件とは??

ゲームストップ株事件とは、2021年1月にニューヨーク市場に上場しており、ヘッジファンドが大量に空売りをしていたゲームストップという株式を個人投資家が集団で買って急騰し、ヘッジファンドに巨額の損失が出たという事件です。

何が起こったのか??

今回、アメリカの株式市場でゲーム小売チェーンのゲームストップという銘柄が歴史的な暴騰を記録しました。

どのくらいの値動きがあったかというと、1月27日の終値は昨年末比で18倍、26-27日のたった2日間で4.5倍に急騰という異常さです。

  • ゲームストップは21年1月期は赤字が見込まれており、成長期待が高まっている訳では無いということ。
  • ゲームストップは発行株式数よりも空売りの株数の方が多い状態であったこと。

今回の件は個人投資家の集団での買い注文が集中し、空売りをしていたヘッジファンドを締め上げて買い戻させる動きになったことが原因です。

1月27日の取引では売買代金が300億ドル(Appleの1.5倍、東証の約1日分の取引)となりました。

これは、発行済株式数以上の株式が連日取引されるという異常事態です。

また、ゲームストップに続き映画館のAMCやアパレルのExpressなどにも同様の現象が発生しています。

1月28日にはアメリカン航空も一時80%高となっていたりと他の銘柄にも広がりました。

暴騰した理由は??

2020年に急拡大したロビンフッドというスマホ証券の株取引のアプリを通じて個人投資家の短期売買が株価を急騰に導きました。

世界的な株高で個人投資家の投資資金が拡大している中、経済対策の現金給付もあり運用原資がさらに増加したことも背景にあります。

ロビンフッドでは売買手数料が無料で1ドルから投資できることなどから未成年者の取引も多く、金融当局から罰金命令も度々ありました。

これは今回の個人投資家が集団となったことにも繋がります。

個人投資家はSNSのRedditや通話アプリのDiscordで繋がり、投資対象を定めて一斉に売買を呼びかける状況になり株価が暴騰。

投資対象としてヘッジファンドの空売りが多かった銘柄が標的となりました。

ヘッジファンドは空売りを行っていたため、巨額の損失が発生して買い戻しを迫られる状況になります。

そして、このヘッジファンドの買い戻しによってさらに株価が上昇。

力のない個人投資家がヘッジファンドに喧嘩をしかけて勝利する展開になりました。

個人投資家VSヘッジファンド

今回暴騰したゲームストップはもともとゲーム関連の巣ごもり銘柄としてコロナ禍で株高になっていた銘柄です。

そこで値下りを予想したヘッジファンドは空売りをしてゲームストップの株価は下落、機関投資家が空売りしたことによって個人投資も売り始めて株価が大幅に下落していた状態でした。

この空売りに激怒した個人投資家はSNSや掲示板で仲間を集めて、豊富に集まった資金力で対象の銘柄を買いまくって株価を強引に上昇させます。

その結果、株価の上昇に耐えられなくなったヘッジファンドは空売りしていた株を高値で買い戻す展開になり株価はさらに上昇、個人投資家は多額の利益を出してヘッジファンドは巨額の損失を出したことになりました。

その後、空売りをしていたファンド、シトロン・リサーチは空売り対象の企業探しをやめると発表しました。

日本市場でもそうですが機関投資家は豊富な資金力を生かして株価を動かす力を持っています。

機関の空売りによって株価が下落させられることで、機関投資家を敵だと思っている個人投資家は数多く存在しています。

今回の件は個人投資家の怒りが募っていたということなのでしょう。

取引制限に発展

28日朝にロビンフッドはゲームストップなどの銘柄に対して取引を制限、新規での購入は受け付けず、オプション取引では証拠金比率を引き上げました。

インタラクティブ・ブローカーズでも、オプション取引などを制限して「取引所などが取引を禁止するか、新規売買を制限するかしないと状況が収まらない」と説明しています。

取引制限の結果、個人が買いにくい展開になってゲームストップ株などの急騰した銘柄は一時60%以上の急落となりました。

この急落によって多額の損失を出した投資家も多いことでしょう。

株式市場全体に警戒感も出てきており、27日のダウ平均は一時730ドル安、29日のダウ平均は620ドル安となりました。

株式市場以外にも影響

この異常事態を見て、27日にホワイトハウス、ナスダック、SECなどが警戒態勢を示しました。

28日のロビンフッドの取引停止措置に対しては個人投資家の反発がSNSで急拡大、ボラティリティが高まったとの理由で突然取引を制限するのは投資家保護に反すると集団訴訟も考えられてきています。

また、ヘッジファンドは取引できるのに個人は買えないということも問題視されています。

これは証券市場や証券会社の在り方も問われる議論になり、政治的な問題にも発展していきそうです。

空売りの怖さ

今回の件で空売りの怖さも改めて確認することになったかと思います。

通常の買ってから売る取引では損失は値下がりした分となり、最大でも買い付け総額までしか損失が発生しません。

しかし空売りの場合、一万円で空売りした株が5万円になったら買い付け総額の4倍の損失が発生してしまいます。

空売りを行う投資家の方は損失リスクが高いことも覚えておかなければいけません。